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認知症の方とケアの専門家が生活を共にする介護施設「グループホーム」。
ここでは一日として同じ日はありません。グループホームで繰り広げられた「心 温まる物語」をご紹介します。

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vol.7 出会い、別れ

グループホーム ユニットリーダー
愛知県(女性・20代)
介護士経験 5年3ヶ月

何年か前の話になります。
私にとても親切にしてくれたご利用者様がいました。

その人、Aさんは軽い認知症でしたが、私の名前を覚えてくれて、

「いくちゃん、いくちゃん」

と呼んで、内緒でお菓子をくれたり、自分で作った人形を私にくれたり、時には私が仕事でバタバタしていると

「いくちゃん、ここでちょっと休んでいきやぁ」

と言って体を気遣ってくれたり、急に後ろから抱きついてきたり…
とってもユーモアのある優しい方でした。

そんな毎日を過ごしていましたが、ある時期に私は留学をするために会社を長い間休むことになり、Aさんにもそのことを伝えました。

留学から帰ってきた私は、また元のホームに戻りましたが、Aさんは体調を崩してすでに退居していました。
それ以来会えなくなって、寂しいなぁと思いながらも、日々の仕事に追われていき、思い出す事も少なくなっていきました。

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それから1年以上経ったある日、私の祖母の体調が悪くなって、市民病院へ入院となり、私も面会に何度か足を運びました。

その時にバッタリAさんの娘さんを見かけました。
おそるおそる「こんにちは。」と挨拶し、名乗ると覚えていてくれたらしく、昔話に花が咲きました。

Aさんの話にもなり、ここで入院しているとのこと…
しかももう歩くことも難しく、危険な状態との事でショックを受けました。

心の中では、
(やっぱり覚えてないだろうなぁ…)
(でも覚えてなかったらショックだよなぁ…)

など色々考えながら病院へ行き、ゆっくりカーテンを開けると、
痩せた手にはたくさんの点滴、さらにベッド脇にはたくさんのチューブが垂れ下がり、昔の面影は少ししか残っていないAさんが眠っていました。

声をかけようかと迷っていると、目が覚めたようで私と目が合いました。
ひと呼吸あけ、Aさんが

「いくちゃん?今戻ったの?」

私は一瞬何のことか良く分からなかったのですが、覚えていてくれていた事に感激して涙がどんどん溢れてきました。
そしてAさんと2人で抱き合ってわんわん泣きました。

話していくうちに、「今戻ったの?」という質問の意味が分かりました。

Aさんは、私が海外に行ってくると言った事も覚えていてくれたようで、たった今戻ってきたと思ったようでした。

面会を終え、温かい気持ちで家へ帰りました。

それから何週間か経った時、葬式の看板にAさんの名前が書いてあるのを見つけました。

体の中が少し熱くなりました。
色んなことを思い出してきました。

私は介護の仕事を続けてきて5年経ちました。
亡くなった方を何人も見てきて、辛くて仕事を辞めようかと思った事も何度もありました。

この仕事を続ける意味は?

出会っても私より早く亡くなってしまう。
もう人が亡くなるのは見たくない。
もう嫌だ。

でもAさんとの出来事があってから考え方が変わりました。

人が亡くなるのはやっぱり辛い、後悔も残る。
だけれども、少しでもこの人の役に立ちたい、思い出に残りたい、最後に笑顔で見送りたい。

今はそう思っています。


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